時には賢く逃げてもよいのじゃ

桔梗屋の若旦那と新右衛門さんの部下、辰之介さんがやって来ました。

一休「お二人揃ってどうされました。」

若旦那「辰之介さんが難しい顔をして歩いていたものですから、悩みがあるなら一休様に相談されては、とお連れしたのです。」

辰之介「担当している案件がことごとく暗礁に乗り上げておりまして、困り果てております。」

一休「易には天山遯という卦がありましてな、一旦遯(のが)れる効用を説いておりますのじゃ。

遯れるといっても逃げるわけではなく、力を養い、好機が来るまで待つということ。

辰之介さんもここは一旦遯れて英気を養ってみては。そうしている間に、良い考えも浮かんで来ましょう。」

天知「上爻の”遯れて泰然と遊ぶ”など、一休様そのものではないですか。」

一休「わはは、そうじゃな。それはわしのためにあるな。」

森女「わははじゃありません。」

一休「森女ちゃんにはかなわんから、たんに逃げよう。」

若旦那「私も遯れて、好機が来るまで待つとしましょう。」

一同「あんたは遯れんでよろしい。」